過剰な観光利用!白保はどう変わっていくのか
――― 海の中はどうなる?
ホテルの集客は1日500人ということですから、おのずと白保の海への観光客が増えることは避けることはできないでしょう。ホテル事業者は、地元の海レジャー業者への斡旋を謳っています。もちろん地元の事業はサンゴ礁保全に最善の努力をし、海にも人にも優しいツアーを目指していますが…1日のシュノーケル人数が数十倍にも増えたポイントでは、サンゴの上に建ってしまったり、フィンキックによってサンゴが折れてしまうダメージは確実に加速されることが予想されます。さらに、皆さんが使うサンオイルや日焼け止めに含まれている成分は、サンゴの成長を阻害する要因の一つになっています。多くの人がこれらの製品を使う事により、サンゴへのダメージが増加することが予測されます。
そのほかに、海の事故もよそ事ではありません。今はめったにない水難事故も、人数が増えることで件数も増えるでしょう。
白保の海に、多様で豊富な魚が存在するのは、保全活動もさることながら、環境と観光のバランスが取れているからでしょう。過剰な観光利用により、このバランスが崩れた時にどうなるでしょうか。
白保の海レジャー業者は平成26年に「保全利用協定」を結び、持続可能な自然利用を目指してきました。
「保全利用協定」とは、事業者間で自主的に策定・締結するルールで、「保全」と「利用」双方のバランスをとりながら、次世代に豊かな自然・文化を継承し、同時に観光産業の持続的な発展を図る県認定の制度です。白保のアオサンゴ礁地域は平成26年に認定されました。私たちの目指すところは、「持続可能な自然資源」であり、次世代へこの豊かな自然と文化を残したいのです。
――― 浜辺はどうなる?
観光客が増えるということは、サンゴだけの問題ではありません。
もちろん浜辺に下りる人が増えるということですから、焚火・花火、騒音やゴミ問題も考えていかなくてはいけませんし、砂地は踏み固められ、これもまたウミガメ問題に直結する話でもあります。
また石垣市は、海浜での遊泳は、事故が起こった場合の責任を負いかねるため、安全な指定海水浴場での遊泳を勧めています。にもかかわらず、指定海水浴場に指定されていない白保海岸で、宿泊客が無秩序に海浜からシュノーケリングする可能性も無しとは言えません。
地元観光業者は、環境に与える負荷をできるだけ小さくする取り組み(自主規制・自主ルール)を積みながら、安全に白保のサンゴを守って行きたいと考えていますが、はたしてホテル事業者はこのような無知な観光客が自己責任によって安全に白保の海を利用し、さらに踏み荒らしなどによるサンゴの破壊を止めることができるのでしょうか。
――― 集落内はどうなる?
白保集落は、昔ながらの景観が残るとても静かな集落です。
国道から入った集落内では子供たちが走り回わったり、おじぃおばぁが散歩するのびのびと過ごしている生活の場です。
過剰な観光利用になり、集落内での車の事故が増えることはもちろん考えられますが、それよりも懸念していることは集落の「白保らしさ」が変わっていくことです。
白保の人たちは人を楽しませることが大好きで、なんでも受け入れる大きな心を持っています。ですので観光客が白保の暮らしぶりや文化を観光することはもちろん歓迎しますが、問題はそのバランスです。
小さな集落ですから、これ以上観光客が増えれば地域の生活と観光対応のバランスが崩れ、「白保らしさ」が失われていくことを私たちは懸念しています。
白保では、他の地域では見ることが減ってしまった、木造赤瓦の屋敷やサンゴが積み上げられた石垣、福木の屋敷林がこの村には多く残っており、かつて沖縄のあちらこちらで見られた素朴な村の風景を今も目にすることができます。
年中行事では海の恵みに感謝する「海神祭」をはじめ、疫病から集落を守る「シマフサラシ」や海水に手足をつけて健康を祈る「サニズ」など、行事や習慣から海との関りを見ることができ、昔から海を大切にしてきたことがわかります。
また先代からの伝統によって、しらほ独自の獅子舞や棒術などの保存会が結成され確実にその文化と技能が継承されています。
さらに、ゆいまーる(助け合い)精神をもとに、子育ても集落で育てるという意識があります。集落ですれ違う子供達は必ず挨拶をします。この様子からも、子供たちの世代まで、白保で受け継がれているゆいまーるの精神が受け継がれている様子が伺えます。
この独特な集落の文化は、移り行くこの時代の中で一朝一夕で出来たものではなく、村の人々の努力の賜物です。
時代を逆流している所もあるかもしれませんが、これが私たちの守りたい白保らしい村なのです。
変わりゆく流れの中で、守っていかなければいけないもの、変えてはいけないものを、白保の人々は日々考え最善を尽くしています。私たちの誇りでもあるこの「白保らしさ」をいつまでも残していきたい。この想いでいっぱいです。